更新時期をむかえる日本の社会資本

日本は1960年代から70年台の高度経済成長期にかけて、社会資本(道路、上下水道、公民館等)を急速に整備してきました。2014年時点における社会資本のストック額は927兆円と推計されていますが、その多くは、今後数十年間で老朽化に伴う更新投資が必要といわれています。例えば、道路、港湾では20年後に既に整備されている施設の50%が更新時期を迎えるといわれています。国債、地方債の発行残高が1,000兆円を超えている中で、さらに人口減少に伴う税収減、高齢化に伴う社会福祉費用の増大と、課題が山積みです。


出典:内閣府ホームページ 社会資本ストック推移

水道事業についても状況は同様です。少子高齢化の進展や節水機器の普及、代替水源への切替(地下水)、多様なサービスの登場(ボトルウォーター、宅配水)によって、水需要が長期的に減少傾向であるにもかかわらず、老朽化する施設の更新投資などによって費用は増加するため、料金値上げの圧力が高まっています。

民間資金を活用した社会資本の整備

このような状況の中で、社会資本の更新費用をどのように賄えばよいのでしょうか。

一つの解決策として、社会資本の整備・運営を民間事業者に開放し、民間の資金・ノウハウを利用して効率的な経営を目指す手法が注目されてきました。1999年にPFI(Private Finance Initiative、民間資金の活用等による公共施設等の整備等に促進等の促進に関する法律)法が制定されて以来、現在までPFI事業数は実に500件(2015年9月30日時点511件)を超え、事業規模の総額は5兆円に達しつつあります。

出典:内閣府ホームページ PFI事業実施状況 事業数及び事業費推移(累計)

日本でもPFI事業が定着しつつあるように見えますが、その7割以上が、発注者である公的機関が実施事業者に対して、事業費見合いのサービス対価を事業期間を通じて割賦またはリースで支払う「サービス購入型」のPFI事業となっています。これまでのところ、こうした“ハコモノ”を中心とした延払方式の公共事業となっているのが実情です。これでは、公共施設の運営を民間事業者が肩代わりしているだけであり、結局資金の源泉は公的機関が調達しているという点では何ら変わりはありません。

コンセッション方式への注目

このような状況の中で近年注目されているのが、2011年のPFI法改正で導入されたコンセッション方式(公共施設等運営権制度)です。コンセッション方式とは、料金収入がある公共施設の運営事業において、公的機関が施設の所有権を有したまま民間事業者が当該施設を利用して事業の運営にあたる制度です。民間事業者は施設を利用して事業を運営できる権利である「運営権」を購入し、事業を運営していくなかで、利用者からの料金収入等で費用をまかないます。

安倍政権は2013年6月に発表した成長戦略の中で、道路、空港、上下水道などの公共インフラの事業運営を民間事業者に開放することで、経済の活性化と財政健全化を実現する方針を打ち出し、過去14年で4兆円規模であったPFI事業を今後10年で12兆円規模まで拡大する目標を掲げました。その中でもサービス購入型ではなく、コンセッション方式の適用を強く打ち出しています。

コンセッションを導入した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
まず発注者である公的機関のメリットとしては、民間事業者に公共施設の運営事業を任せることで財政負担なく、整備・維持運営することができる点があげられます。また、既存施設にコンセッション方式を導入する場合、運営権に対する対価を受け取ることができ、当該収入を原資に、既存債務を圧縮することができます。更に、民間のノウハウ導入による経営の効率化、マーケット・リスクの移転、行政組織のスリム化なども期待できます。

一方で民間事業者側からしてみれば、今まで、公共施設の運営事業は公的機関の特権であり、参画することが出来なかったわけですから、新たな市場ができることになります。利用者によっても、民間事業者が所有する技術やノウハウを最大限活用し、不必要な経費については効率化しつつ、料金収入をあげるために、顧客サービスを充実させるはずですから、利用者も恩恵をうけることになるでしょう。

これから日本の水道事業の現状の課題を確認しながら、より深くコンセッションの仕組みやその意義について見て行きましょう。