働き方/子育て work_childrearing

“運営”でなく“経営”感覚で市政を運営する

民間の活力を積極的に導入持続可能な自治体を目指す

住民、国民の暮らしに最も近い所にある行政機関…。それが私は自治体であると思っています。「人々の満足度を向上させる」ことこそが自治体の本来の役割、使命でなければなりません。

我が国では明治維新以降、中央集権的な行政制度の名残が強かったせいでしょうか。長い間、自治体が「国の出先機関としての機能」を担ってきた歴史があります。しかしその後、自治体財政の悪化などを要因に、国への依存体質を見直す声が高まり、2 0 0 0 年には「地方分権一括法」が施行。結果として、国と自治体の関係は対等・協力の関係になったものの、今度は自治体間で格差が拡大するなど持続可能な行政運営の難しさを痛感させられました。

市政を持続可能なものにするうえで、特に大切にしているのは「運営」でなく「経営」の視点です。お金、すなわち市の財政にまつわる諸問題に対し、真正面から、官民一体となって議論する。こうした風通しのよい環境こそが、行政に山積する諸課題の解決の糸口になると考えています。

このことを説明するのに私はよく「稼ぐ行政」という言葉を使います。自治体財政が健全であれば、その分を未来への投資に回せる。災害対応などの危急の事案に即時対応するのは行政の責務ですが、一方で、市の未来を育むのに必要なのは財源=「お金」です。その意味では、お金の議論は決して避けては通れないのです。

地方公共団体の財政力をはかる尺度に「財政力指数」があります。この数値が1.0を下回った自治体は地方交付税の交付対象となり、逆に上回れば自前で財源を確保する必要が出てくる。いかに上手に舵取りするか?ここに経営者的な 感覚が要求されるんですね。「未来への積極的な投資を行う」といった発想も時には必要となります。

その際に、最大の課題となるのは財源=税収の確保です。たとえばふるさと納税の拡充や(固定資産税や住民税に直結する)地価を維持・向上させるために宅地開発を促進する施策を講じるなど。実際に、本市の居住地区の土地および中古住宅価格は上昇傾向にあります。市内外の人々にとって、不動産などの資産価値が高いことは守谷市に住む魅力のひとつと映るはずです。 ちなみに現在、本市の人口は約7万人。全国的には平均的な規模ですが、地方人口が減少傾向にある中にあってこれは立派な数字といえます。他市から羨望の眼差しを向けられることもあります。しかし、今後は油断できません。現在の人口規模を維持するためにはさらに守谷市を魅力的にし、それを発信していかなくてはなりません。都心に近い割に緑が多く、自然に恵まれた生活環境。また、未来を担う子どもたちへの積極的な投資や、子育てしやすい環境など…。守谷市独自のストロングポイントを内外にアピールする必要があります。

私は、民主主義の基本は「個」だと思っています。可能であれば、市民一人ひとり(個人)と行政と が、直接結び合う形こそが社会形 態の理想形とさえ考えています。

その点、昨今の D X(デジタル・トランスフォーメーション)の波が、今後、行政サービスの在り方を劇的に変える起爆剤になるかもしれない。このDXに関連して、令和元年から本市は民間企業と連携協定を締結。「行政版C R M」に着手しています。テーマは「未来型の自治体をつくる」こと。民間企業にとっての「お客様( 消費者・顧客)」を「市民」に置き換えれば、民間の感覚と同様の発想が可能です。

官の内部人材だけで行政施策の企画や施行まで行おうとするとどうしても限界がある。「官民連携」の発想が必要です。以前は「役所に民間を近づけ過ぎてはいけない」という不文律が存在した。しかしそれも昔のこと。自治体運営や予算、個々の施策について、行政と民間企業とが表立ってやり取りするのはタブーではありません。既成概念や障壁を打ち破ること。変化を恐れず、チャレンジ精神をもって、市民の目線で施策の意義や効果についてしっかり検証していくこと…。こうした民間の活力やマインドを市政に導入することで、今までに無い斬新な発想が可能となるのです。

「本当の豊かさ」をテーマに理想的な市政運営を追求

守谷市は今年、市制20周年を迎えました。市の未来を預かる身としては、市民の皆さんが「守谷市での暮らしに本当に満足感を得られているか?」という点が最も気になります。

自治体運営という点でいえば、全体として守谷市は成功していると自負しています。たとえば T X の開通に伴う沿線開発も順調、それに付随して人口も増えています。また余談ですがヘブライ語で「モリヤ(m o r i y a)」は「聖なる地」を意味する。守谷とは、まさに天の恵みのような土地だと思っています。利根川、鬼怒川、小貝川などの河川に囲まれていながら水害の危険性が低い。海抜が高い(平均20m)ことが要因です。加えて台地の頑強な地盤ゆえ地震にも強い…。

しかしこれからの時代は、ますます「本当の豊かさ」が重要になっていくと思います。言い換えれば「市民ひとりひとりの心の中にある満足感」「内面的な世界」を満たすこと。これらを指標に、行政運営の在り方を模索する必要があると感じます。たとえば「住みよさ」とは、行政だけでなく、官民の信頼関係で創り上げるものではないでしょうか。過度な行政サービスを施した結果、市民はそれに依存し過ぎてしまう。その結果、自分たちの地域の問題を自分事として捉える感覚が麻痺していく…。行政と市民がお互いに「ありがとう」と言いあえる関係の構築。市民の自発性 に基づいたまちづくりが推進できれば、行政コストが低減できるし、余った財源を他のサービスに転用することも可能です。

さらに市民個々の満足度を考える上では「多様性」の側面も重要です。本市は「子育て層」「シニア層」など、各地域の住民の年代層や特徴が異なります。そこで住民の年代やライフスタイル、特性に応じて細かく財源を分配。また「まちづくり協議会」を設置し、域内分権や地域自治を推進しています。「全員同じ」ではないが「個々人が幸せ」であることを目標としたいのです。

未来のリスクに備えて「官民一体」で取り組んでいく

「子育て」「教育」は本市が最も力を入れている分野です。現在、第三次学校教育改革プランを策定。守谷型  G I G Aスクール構想」の名のもと、I C T の活用推進などの様々な施策を展開中です。改革の発端は、過去に過重労働の状態に置かれていた小中学校の教員たち。彼らの負担を軽減すべく導入された「働き方改革」でした。また成功の背景として、市長である私と市の教育委員会との良好な関係も見逃せません。

そこで業務時間に余裕ができた教員たちは、「教育へのI C T の活用」について議論を開始。これが国より一年以上も早いスピードで「プログラミング教育」などの先端授業に着手できた理由です。またコロナ禍での「双方向リモート授業」「D X 教育」など。次々に成果をあげています。

未来のリスクについては全く無いとは言い切れない。他の自治体同様、人口減少について正確に予見することは不可能です。しかし常に、それに備えた行動を考え、実践しています。たとえば新守谷駅周辺および守谷サービスエリア周辺の開発。これらは将来の法人税獲得の手段のひとつです。また「わくわく子育て王国もりや」をはじめ「いきいきシニア王国もりや」「地域主導・住民主導のまちづくり」「スマートデジタル王国もりや」という4本の柱に「王国もりやの未来創り」を加えたフォープラスワンの「もりやビジョン」の展開など…。

持続可能かつ多様性と包摂性の ある社会の実現に向けた取り組みを、官民一体で推進していきます。

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